稲盛和夫氏 2012年カレンダー7月8月

京セラ名誉会長 JAL名誉会長
稲盛和夫氏 盛和塾2012年カレンダー

 

先日ようやく、原稿データをいただくことが出来た(笑)たぶんご存じない方はいないだろう、というくらい日本を代表する経営者である。僕の中でも、とにかくとてつもなく大きな存在の方である。先のColumnでも何度か書かせてもらったこともあると思うが、この方にお会いして自分の写真道が間違いなく変わった。

 

僕が写真を撮らせてもらう時、もちろんその方の前情報というものは、自分なりにリサーチさせて貰ってその撮影の場に臨む。しかし、それよりも実際にお会いした瞬間のインスピレーションというものをとても大切にしている。世に出ている情報よりも、自分の目で見て、肌で感じたその方の印象の方が遙かに真実に近いのであるのだから。

 

写真を通して様々な方とお会いしてきた。僕がカメラを持たせていただくことで普通では決してお会いできない方々とお会いすることが出来る。これ以上の幸せは無いと思いながら。そして、そのファインダー越しにその被写体になっていただいた方とはその一瞬ではあるが、僕とその方だけの世界に入り込める。

 

おこがましくも 「差しで勝負できる」と思っている。いやいや、もちろん相手の方はそんな大それたことなど、僕ごときのカメラマンに感じることはないだろう。そんなことはどうでも良い。

 

僕の中で写真という世界で生きて行く上での最大の勝負の場で真っ正面からその方と対峙し真剣勝負出来る。僕は、その人の真の姿に飛び込んで行ける。こんなに素敵なことはない。

 

このカットは、初めてお会いした鹿児島の城山公園でのものである。まさに僕はそのとき「生きていることに最大の感謝」をしていた。僕の中で、本当にそう思えるような人物だった。この撮影の後、広報さんを通してこんな言葉をいただいた。

 

「うちの稲盛が言ってましたよ。あいつはプロやな」と

 

もちろん、本当にそんなこと言っていただいたのかどうかは判らない。それでも僕は、その言葉を真正面から受け取らせていただいてここまで走り続けてきた。そして、これからも走り続けていくだろう。

 

僕は決して写真の技術からしたらそう上手くはない。僕にとっての写真の技術なんてどうでも良い。いや、どうでも良いというのは言いすぎかな。写真というものは、ある程度の技術やそれにまつわる知識は絶対的に必要である。しかし、それはプロとしては当たり前のことでありそれをクリアーすることは仕事をしていく上で必須の条件である。

 

ある一定以上のレベルに到達することが出来た時点からがそのカメラマンの本当の技量が試される。僕は、技術的な面だけではないその先の精神という部分に写真というものを位置づけてきた。被写体になっていただける方々の内面から湧き出る

 

たとえば想いであったり願いであったりまた時に祈りであったり。そんな芯の根源たるものを写真を通して表現できないか。そんな風にいつも考えている。そしてそんな想いで撮らせていただいた写真がその方の心のどこかに引っかかったときに「おー、俺もまんざらじゃないやんけ。結構カッコエエやんけ」なんて言っていただけるのかもしれない。

 

その写真を見てそんな風に思ってくれることが僕にとっての最大の賛辞になると思える。この撮影が終わってから、稲盛氏は一枚の写真を気に入ってくれて家に飾りたいから一枚欲しいと言っていただいた。額装してお渡しさせていただいた時のあの方の笑顔を今も忘れない。

 

僕は、写真しか無い。けれど、この「写真しか」という言葉の強さを信じたい。今までやり続けて来た。続けられてきたからこそ信じれる言葉。まだまだ精進が足りない。判ってる。けれど僕は続ける。まだまだ続けていく。

 

「お前、なかなかエエ写真撮るやないかぁ〜」って言われるように。

 

2012/07/21