僕が撮らせてもらうポートレートは大がかりのセットになります。
ここ最近では、
「手軽にどこでも撮れる、時間も掛けることなくポートレートを撮影します」という
うたい文句 の広告も良く見かけるようになりました。
それはそれで良いなと思います。
忙しく時間を惜しむ人たちにとってこの上なくそのニーズに合っているのかもしれません。
僕はいつも考えます。
ポートレートの役割とそしてそれを見る人達の思いを。
時間を掛け手間をかけワンカットワンカット シャッターを切る意味合いを。
先日、以前もう1~2年前になるでしょうか
撮影させていただいた方からこんなメールを頂きました。
「菅野さんに撮っていただいた写真。その中の私がいつも今の自分を元気づけてくれ勇気づけてくれるんです」と。
講演会のプロフィール写真でも使わせていただいています。
新聞広告まで写メで撮って送ってくれました。
なんだか素敵なメールでしょ。
これほどカメラマン冥利につきることはありません。
撮ってくれた写真で無く。。。その中に居る自分。
ここに僕が思う「写真の力」を強く感じることができるのです。
携帯でもコンパクトカメラでも誰でも簡単に撮れるような時代になりました。
なんと言っても、昔に比べ格段と機材の量が減りましたし、機材一つ一つもコンパクトになり
軽量化もされてきました。
ただ、だから簡単に、手軽に撮る、撮れる。。。。これは違うと思うのです。
写真を撮るpassionは、機材などでは何一つ解決されないもの。
あくまで付け加えておきますが、手軽に撮る、なるべく簡単に撮る。
これを否定しているのではありません。
僕が知る同じような業界の人でも本当にいとも簡単なセット、機材で
素敵な写真を撮る人は存在します。
でもね、それはきっとどれだけ簡単に、どれだけ少ないセットでも
人に喜ばれる写真を撮れるかということを
その人は深く深く考えているからこその写真なのです。
写真なんてね、実は見る人が見たら簡単にその底なんて見えますものね。
昔、ありました
「心でシャッターを切る」
っていう セリフ。
めっちゃ、くさいセリフやなぁ〜 とか思ってましたが、
こんな誰でもたやすくカメラを持てる時代、操れる時代になってくると
やけにこんなセリフが身につまされてきます。
僕は最初に書いた
僕が撮るポートレートは大がかりのセットになります。
実は結果に過ぎません。
「あなたの魅力はなんですか?」いつも心で問いかけながら写真を撮らせてもらいます。
どんなに些細な表情だろうと、しぐさだろうとあなたから湧き出る魅力は細部まで撮り逃したくない。
その魅力を表現するには、今の僕の力では簡単な機材、簡単なセットでは映し出せない。
それだけなのです。
そうした試行錯誤から生まれる写真に「写真の中に居る自分に勇気づけられる」という想いが生み出されるのであらば、今の僕にはそれが一番良いやり方だと思えるのです。
だからと言って撮影するのにものすごく長い時間がかかるってことではないですよ。
あれやこれやとやりとりしコミュニケーションを深めながらの撮影はとても楽しいものです。
そしてその一瞬一瞬を切り取らせていただく作業の中から、これまでに見たことなかった自分の表情を発見していただいたりすることは被写体の方にも楽しい時間になってくれているのではないかと思えたりするのです。
2016/08/23